高齢者の身体拘束ってどこからどこまでが当てはまるの?身体拘束の事例(身体拘束11項目)
介護施設での身体拘束というと、椅子に縛り付けたり手錠をはめたりといったケースを思い浮かべるかもしれません。しかし、実は身体拘束の幅はもっと広く、もっと身近な例にも及んでいます。ここで身体拘束とはどういうケースなのか確認してみましょう!

高齢者に対する身体拘束は介護保険で禁止されています。
介護保険の中に「介護施設などで身体拘束は原則禁止!」と、明記してあります。その部分を以下に抜粋してみました。
介護保険指定基準の身体拘束禁止規定
「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
緊急やむを得ない場合以外は身体拘束や行動制限をしてはいけない、と書いてあるのがわかります。
緊急やむを得ない場合とはどんな時?
身体拘束が認められる緊急やむを得ない時とは、どんな時でしょうか?
介護保険指定基準の中で、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの条件が全て当てはまった時に限り認められると記されています。
これを簡単に言うと「本人や周りの人を危険にさらす可能性がある時、どうしても他に方法がなければ、一時的な手段として」身体拘束を認めるということです。
特に「一時的」という部分が忘れられがちです。
日常的な身体拘束は間違った行為であることを知って頂きたいと思います。
また、やむを得ず身体拘束をした場合にも、その事実を記録として残すことやご家族・ご本人に対して説明をして理解を得ることなども留意事項とされています。
身体拘束の事例は?身体拘束11項目
それでは、身体拘束とはどんなことを指すのでしょうか?具体例を挙げてみましょう。
以下は、厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」の具体例を参考に掲載しています。
- 徘徊しないように、いすやベッドに身体を縛る。
- 転落しないように、ベッドに身体を縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵で囲む。
- 点滴などのチューブを抜かないように、身体や腕を縛る。
- 点滴のチューブを抜いたり皮膚をかきむしらないようにミトン型の手袋をつける。
- 車いすからのずり落ち・立ち上がりを防ぐ為に、Y字ベルトや車いすテーブルをつける。
- 立ち上がることができる人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
- 脱衣やおむつはずしをしないように、つなぎ服を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに身体ををひも等で縛る
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に飲ませる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
特に、ミトン型の手袋やベッド柵などは、身体拘束だと思わずに使用している場合があるので注意が必要です。
ご家族が身体拘束を受けない為に
高齢者のご家族の中には、介護施設に迷惑をかけたくない、本人に怪我をしてほしくないという想いから「拘束をしてほしい」と申し出たり「拘束されても仕方がない」と思っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
ですが、身体の自由を奪われながら生活をすることは、苦しく辛いことです。
どうすれば身体拘束をしないで過ごすことができるかを、介護施設と共に考えていきましょう。そしてまた、一緒に考えていけるような介護施設を選んでいただきたいと思います。
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