「ご飯をまだ食べてない」と訴える認知症の母にどう接するべき?
認知症の方の中には食後すぐに「ご飯を食べていない」「早くご飯を作ってくれ」と言われる方がいらっしゃいます。もしあなたの家族がそう言った時、どう対応すれば良いでしょうか?

さっき食べたばかりなのに・・・。
認知症を患っている方の中には食後すぐに「ご飯を食べていない」「早くご飯を作ってくれ」「朝から何も食べていない」と言われる方がよくいらっしゃいます。
また、1日を通して何度も「お腹が空いた、食事はまだ?」と聞かれる方や「何も食べさせてもらえない」と親戚や近所の方に言うケースもあります。
もしあなたのお母さんがそう言った時、家族としてどう対応すれば良いでしょうか?
認知症は「思い出せない」病気です。
もし家族が、「お母さん、何言ってるの?さっき食べたでしょう!」と対応した場合、ご本人はどう感じるでしょうか?
認知症は、思い出せない病気です。
たとえ「ほら、うどんを食べたでしょう?」とメニューを伝えて思い出させようとしても、それで思い出せるものではありません。
ご本人は思い出せないので、納得もできません。
「食べてないって言ってるのに、食べさせてもらえなかった」と、より悲しくなってしまうでしょう。場合によっては、怒り出すかもしれません。
本人にとっての真実は何か?
本人にとっては、「食べていない、お腹が空いた」と感じていることが真実であって、
実際に胃の中にうどんが入っているかどうかは問題ではないのです。
それなのに「ほら、食べたじゃない。この器を見て。」と言われても混乱してしまいます。
時々、「そうだったね、食べたわね。」と思いだしたフリをしてその場を取り繕う方もいらっしゃいます。
しかし、本当に思い出したわけではないので、しばらくするとまた「ご飯まだ?」と言われます。
つまり、「もう食べたよ。」と事実を教えてあげることでは解決できないのです。
特に、認知症の症状が出始めたばかりの頃は、思い出して欲しくてこのように対応してしまいがちなので注意が必要です。
ご本人の気持ちを受け止めることが大切です。
お母さんは食べた記憶がなく、「朝から何も食べていない」と思っていらっしゃいます。まずはそこを否定せず、気持ちをしっかり受け止めてあげることが大切です。
実際には食べていても、「ああ、ご飯まだなのね、何も食べてないのね、それは空腹でしょう」と、ご本人の気持ちを代弁してあげることで「分かってもらえた」という安心感も生まれて落ち着くことができます。
例えば、あなたが学生だった時を思い出してみてください。
どうしようもなく空腹で、自分の母親に「ご飯まだ?」と聞くことはありませんでしたか?
その時母親が「もうすぐ出来るわよ。」と言うと安心しませんでしたか?
もしくは、「今準備してるから、これでも食べておいてね。」と、何か食べ物を渡されれば納得できたはずです。
つまり、学生時代にお母さんがしてくれた対応をそのまま返してあげればいいのです。
実際の対応の方法は?
- 「今ちょうど準備してますよ。」と言って安心してもらう。
- 「もうすぐだからこれを食べててください。」と食べ物を何か食べて貰う。
- 「とりあえずお茶(珈琲)が入りましたよ」と飲み物を飲んで頂く。
- 「実は私も食べてないので、一緒に食べに行きましょう。」と外出を促し、散歩に出る。
- カロリーが気になる時は食事量を調節してカロリー過多になりすぎないようにする。
- 親戚やご近所にも同じように対応してもらえるようにお願いをしておく。
これらの方法を試しながら、違う話題で話しかけたり、場所を変えたりしながら少しずつ食べ物のことを忘れて貰うことも大切です。
普段私達も、お腹が空いたときだけじゃなく、暇つぶしだったりストレスの発散だったり、色んな原因で「食べたい」と感じます。
ですから、「今食べたところなのに!」とあまり神経質になり過ぎず、「ああ、何か口寂しいのかな。」と気楽に考えるようにすると良いと思います。
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