認知症の疑いがある60代の父親。病院を受診したがらない父に認知症の検査をするには?
60代の父親・母親の物忘れが激しく、認知症かもしれないと疑った時、家族としてどうしますか?認知症の検査を受けてほしいけれど言い出せない時、どうすればよいでしょう。

父親が認知症かもしれない。
けれど、認知症の話をすると、怒り出しそうでなかなか切り出せない。
そういう話を耳にすることがあります。
たとえ物忘れがあっても、それ以外の部分はしっかりしている60代70代の方は、認知症の話をしにくいものです。
もし本当に認知症であれば、できるだけ早期発見・早期治療をしたいと思いますが、まず認知症の検査を受けてもらうのが難しいですよね。
60代・70代のまだ若い父親や母親が、認知症ではないかと疑った時、どうやって認知症の検査に誘えばよいかをまとめました。
認知症外来ではなく、まずはかかりつけ医に相談。
認知症というと、専門医、つまり認知症外来を受診したいと思うかもしれません。
確かに、専門医を受診して認知症の検査ができると安心ではありますが、認知症外来は、様々な医療機関の中でも特に足を踏み入れにくい場所ではないでしょうか。
日ごろから認知症を強く意識されている方は、ご自分から進んで認知症外来を受診される方もいらっしゃいます。
しかし、まさか自分が認知症になるなど疑ったこともない方、60代70代の特に男性の方は、認知症外来を訪れるだけでも強い抵抗を感じる方も少なくありません。
一昔前は70歳と言うと高齢者のイメージでしたが、最近の60代や70代はまだまだ現役の方も多く、しっかりした元気な方がほとんどです。
そのため「認知症の検査をしにいこう」と言うと、ムッとされたり、中には本気で怒りだす方もいらっしゃると思います。
そのため、まずは普段お世話になっているかかりつけ医に相談することをおすすめします。
その際、「認知症を心配していること」「日常の中でどんな症状があるか」そして「父親(または母親)にはできるだけ不快な思いをさせたくない」旨を伝えます。
例えば高血圧の薬や便秘の薬などを定期的に処方してもらっているのであれば、そのタイミングで医師から、「そろそろ70歳だから、一度チェックをしてみましょうか。」などと、健康診断くらいの気軽さで声をかけて貰えれば、ご本人も抵抗なく検査を受けられると思います。
検査で何か異常が見つかれば、改めて認知症外来などの専門機関を紹介してもらうことも可能です。それであれば、ご本人も納得して受診をされるのではないでしょうか。
認知症の早期発見・早期治療は大切だけど、最優先ではない。
父親・母親など身近な人が認知症になったかもしれないと思うと、可能な限り早期発見・早期治療を行いたいと思うのが家族の心情です。
とはいえ、認知症はご本人の心のケアも大変重要なポイントになります。
例えば、認知症の診断を受けて告知されることで、大きく動揺してしまい、それが認知症の症状をさらに悪化させてしまう可能性もあります。
まずは、現在認知症と思われる症状が原因で、日常生活に困っているかどうかを考えてみてください。
例えば火をつけっぱなしでよく忘れてしまう、外出して家に帰ってこられなくなってしまう、家族や近い友人の名前と顔がわからない、など日常生活をおくることに明らかな問題が起こっているのであれば、すぐにでも診断・治療が必要といえます。
しかし、数日前に外食したことを忘れてしまう、頼んでいたことを忘れてしまう、冷蔵庫にあるものをまた買ってくる(度を越すとこれも大変ですが)という程度であれば、今しばらく様子を見られるのもよいかもしれません。
一時は認知症と思われる言動が目立って心配をしていたが、様子をみているうちにちょっとマシになってきたというパターンもあります。
また、入院した、家族や近しい友人が亡くなった、引越しをした、離婚した、同居していた子ども・孫が巣立ったなど、最近生活の中で大きな変化があったときにも、一時的に認知症のような症状が目立つ場合があります。
その場合は、落ち着いて普段の生活に戻ることで、少しずつ症状が目立たなくなることもあります。
認知症の早期発見・早期治療は大切です。
ですが、早期発見・早期治療をするために、ご本人の気持ちが置き去りになってしまって、さらに認知症症状が悪化してしまっては本末転倒です。
近くで見ているご家族としては心配でしょうが、比較的若い方や、もともとしっかりしている方の場合、急いで検査をしなくてはと焦りすぎると、ご本人とご家族の関係性が悪くなって、トラブルに発展してしまうケースもあります。
かかりつけ医や地域包括支援センターなど、相談できる機関も利用しながら、少しずつ段階を経て検査されることをおすすめします。