介護イラストレーター群青亜鉛 の「自宅で介護お助けヒント集」 第22回(現在、全22回)
介護ベッドの疑問と不思議編
電動モーターで 昇降・ 背上げ・脚上げ機能付きベッドは 介護ベッドとして知られるようになりました。でもどんな風に寝かせたらいいの?その辺りのふうん、そっかぁ〜、なポイントを。

介護ベッドの使い方が解らず家族が困るのは、入院で付き添いした時や、障がいが進行した時など。自力で動ける時は気にならないものです。
私の場合、祖母が100歳前に入院し、ベッドの背上げ姿勢(ギャッチアップ姿勢、ギャッチ姿勢とも呼ばれます)で食事やおやつ介助をする様になってから疑問が湧いてきました。 いくら慎重に背上げしても姿勢が崩れるのです。
体をもっと頭側に 移動させましょうねの謎
これはベッドの背上げを上げる前に、看護師さんや、介護士さんから必ず言われる言葉です。 寝ている方をベッドの頭側の板に当たる位まで移動させますが、この根拠は何でしょう?まず、身体の作りと介護ベッドの構造を考えてみましょう。
身体の折れ曲がりを考えて、作られている介護ベッド
直立姿勢から膝曲げ(スクワット)をしてみて下さい。深く曲げる必要はなく、チョビッと。曲がっている箇所はどこでしょう?そう、股関節と膝ですね。 この姿は脚上げ機能付き介護ベッドの屈曲とよく似ていませんか?
次にこの姿勢にベッドを立ててあてがってみましょう〜。おおっ、ぴったりです。ということは、介護ベッドは関節が曲がる箇所を考えて作ってあるということですね。
背上げの屈曲軸は、最低でも横になっている方の股関節に来るようにしましょう〜。(イラスト上段・2段目参照)
背上げの屈曲軸の位置は、身体の何処にアル?
地球には重力がある為、背上げに沿って身体はだんだんずれ落ちてきます。すると、背上げの軸は股関節でなく脊柱の位置に来て、背骨が曲げられるだけの不自然な姿勢になります。私らがカラダ固いのに、無理矢理背中押されて前屈させられる様なものです。痛タタタ。
ジ様バ様は更に身体が堅く、放っておかれる事を想像してみて下さい。胸やお腹は圧迫され続け、浅い呼吸しか出来なくなります。姿勢が崩れたり身体の変形を助長します。これで食事なんて出来やしません。(イラスト最下段参照)
→参照記事 「寝る姿勢を整える編(ポジショニングの入り口)2」
この背上げ板の屈曲軸を股関節の位置に近くするため、背上げをする前に、身体を頭側に移動させるという訳なのです。(イラスト2段目参照)
合わない膝上げ機能は無理に使わない
ベッドの、膝ボトム(太ももの位置のベッドの板)の長さがご本人の太ももの長さより長過ぎる場合や、膝の曲がる角度が合わない場合は、膝上げは上げずに使いましょう。 無理に上げると、膝上げに身体が 引きずられ、屈曲軸が 腰や背中に来ます。骨盤が寝たままの滑り座りという姿勢になってしまいます。
そんな場合は背上げを上げる途中で、お尻の下にクッションをかませたり、膝下にもクッションで支えを作ったり等で試してみてください。うちのばあちゃんは、膝上げ機能は使わずクッションで対応しています。膝上げ機能がないベッドでも特に困りません。 (イラスト3段目参照)
以上の注意事項は、車椅子では既によく言われていることなのですが、ベッドでも同じ事が起こっているのです。
→参照記事「食事の場面での気配り編3食事の姿勢」
丸まり過ぎる背中に、介護ベッドの板は合わない
丸まったジ様バ様の背中の曲線は、真っ平らな背上げボードに沿うはずもなく。背上げだけで呼吸し易い姿勢に整えるには無理があります。背中の胸椎を支える様に、クッションを入れる等で対応をしてみて下さい。(イラスト3段目参照)
質問ヂカラをつけましょう
以上、 正統派ではない視点で記してみましたが、如何でしたか。へー、そうなの?位の理解で構いません。これがイザというとき、イキルのです。
多くの介護ベッドが出回っていますが、十分検討してからお選び下さい。機能が沢山あるからいいという訳では決してありません。使い易い、使い難いもありますし、ご本人の状態に合うベッドが一番いいベッドではないでしょうか。(それを探すのがまた大変ですが!)
在宅で介護中の方は、福祉用具レンタル業者のスタッフや、セラピストさん、訪問看護師さん、ケアマネさん等にどんどん質問をしてみて下さい。専門外等ありますが、家族介護者が質問することで現場力が培われます。考えて行動し繋がる次の世代が育ちます。おほほ。
介護イラストレーター群青亜鉛 の「自宅で介護お助けヒント集」は、今年度より不定期連載でお届けします。次回をお楽しみに!