介護イラストレーター群青亜鉛 の「自宅で介護お助けヒント集」 第20回(現在、全22回)
拘縮がある人の緊張と呼吸の関係編
私達が短距離を全力疾走すると息が上がりますが、拘縮が強い方は、いつもそんな呼吸なのだとか。家族介護者でも取り組みやすいリラックスへの糸口を。

第18回では、腹式呼吸がし辛い不良姿勢では筋肉の緊張が強くなると記しました。今回はその点を少し掘り下げて。
(参照記事: 第18回 寝る姿勢を整える編2 腹式呼吸の図はこちらへ。)
初夏に祖母が入院しました。エアマットを敷いてもポジショニング(※)は通常通り行うのがいいそうで、入居中の特別養護老人ホームで使用中のクッションを全て持ち込み活用していました。悩む事が多かったのは枕のあて方でした。ちょうどいい高さってどれ位なんでしょう?
寝てる人の筋肉の緊張具合はどこをみる?
知人理学療法士(PT)さんに病院に来て頂きました。祖母の寝る様子を見たりちょっと触ったり。緊張しているね〜とおっしゃいますが素人にはその判断がよくわかりません。
教えて頂いたのが触ってみることでした。リラックス度を知る一つの方法として、首筋の筋肉の様子を探るといいそうでご家族でも簡単に出来ます(イラスト上段)。頭蓋骨の耳の後ろから、鎖骨に伸びて繋がっている斜めに走る筋肉(胸鎖乳突筋:きょうさにゅうとっきん)がありますが、筋の走る方向に対して直角に指の腹をあて、皮膚と筋肉が動くように動かすのです。ぐりぐりっとね。
首筋の筋肉が盛り上がるのはどういう時?
なかなか位置がわかり辛いですね。ではそのまま首筋に指をあてながら、ストローから吸うように唇をすぼめズズーっと音を出しながら空気を思い切り吸ってみましょう(イラスト下段参照)。斜めに走る首筋の筋肉が盛り上がりませんでしたか? これがその胸鎖乳突筋です。この筋肉がこんなに盛り上がるのは、短距離を全力疾走した後や激しい運動後だけなのだとか。
首には、呼吸補助筋と呼ばれる筋肉(胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)があり、頭蓋骨や頸椎から鎖骨や肋骨と繋がっています。 胸やお腹が圧迫される姿勢では、横隔膜は内臓に突き上げられて下がらず複式呼吸が出来ません。そんな時、呼吸補助筋が収縮して肋骨や鎖骨を引き上げ、胸郭を広げ、肺に入ってくる空気の量を増やしてくれるのだそうです(胸式呼吸)。
常に全力猛ダッシュ後の呼吸状態の方とは
このように、胸鎖乳突筋の緊張具合はひとつの目安になります。拘縮が強い方にはこの筋肉が盛り上がり、頸骨が反り返っているという症状がよく見られるとのことですが、常に激しい運動後の様な呼吸状態なのだとか。まずはねじれや傾きの無い様に姿勢を整えるのが大切で、少し頷く姿勢にすると呼吸がスムーズにいくようになるそうです。形ばかりではなく、ちゃんとご本人の様子をみる事が何よりも重要ですが。
家族が本当に必要な介護に関する知識や技術を仕入れる場は少ない
以前、知人PTさんに質問しました。
「家族の熱意さえがあれば、様々な人に聞いたり訊ねたりして、腑に落ちない様々な環境を変えていくことが出来るのでしょうか?」戴いたお返事は、「片手に熱意。そしてもう片方の手には知識と技術が必要。両方がないとどうにもならない。でも、その知識や技術を仕入れる場所がないと言うのが大きな問題の様に思える。」と。
拘縮のある方も、安楽な姿勢が見つかりますように
今回の内容は、拘縮がある人の緊張と呼吸の関係編としましたが、前回と同様寝る姿勢を整えることに関連しています。奥深く学びたい方は更に調べてみて下さい。ご家族は、安楽に呼吸が出来る様に姿勢を整えるのはどうやったらいいのか、プロにどんどん質問してみて下さい。ご本人にとって居心地のいい姿勢を探す過程で、きっとまた少し気持ちが明るくなれるのではないでしょうか。
ポジショニング(※)
安楽な姿勢を保てるようにクッションなどをつかって寝姿を整えることをいいます。日常の姿勢全体を整えることはポスチャリングと呼ばれたりします。
(記事アドバイス:理学療法士 大渕哲也さん)