介護イラストレーター群青亜鉛 の「自宅で介護お助けヒント集」 第3回(現在、全22回)
車椅子の座面編
今回は車椅子の座面を整える工夫をご紹介します。あまりにも車椅子のクッションで悩まれている家族介護者の方が多い様ですので、掲載時期を早めた次第です。

一般的な車椅子の構造について
さて。車椅子の背もたれや座面は、布張りだったりビニールシートだったり、通常の椅子の様にしっかりと作られておりません。これはなんでなんでしょう?
もうお分かりですね。 車椅子は折り畳む為、こんな作りになっています。座るご本人の為という訳ではなさそうです。介護をする人、車椅子を管理する人のための構造なんですね。
そのシート、新品の頃はピン!と張りがありますが、体重を支え続ける為、長く使っていると座面にたわみが出てきます。このたわみを当たり前だと思っていませんか? 実はこれが曲者だったのです。
このたわみにお尻が収まると、体重は分散せず坐骨結節部分に集中!お尻がすぐに痛くなるのだとか。(図1参照:末尾解説)
この痛さから逃げるため、前にお尻をずらしたりちょっと傾けて座ったりと、身体にとって余り良くない座り姿勢になってしまうのだそう。私達もよくしますが、自分で身体を動かせない方はずっとそのままの姿勢になってしまいます。
左右に不安定なのもこのシートの特徴で、たわむ座面に、真ん中から少しでも外れて座ってしまうと身体がコロンと横に傾き、歪んだ体の状態のまま座り続けることになるといいます。(図2参照)
そんな理由で、座面のたわみを解消することが最優先!クッション選びで悩む前にまずして頂きたいことです。
車椅子の座面のたわみの解消法
(図3参照)一般型車椅子の座面に、座面より一回り小さめの板や、 平縁の金属ネット(30センチ×30センチ位。百円ショップでも売っています。面は金属ネットなのでほどよい支持性とクッション性があります。名称はワイヤーネット等。)を置き、一旦平らな状態にします。座面の回りの固いフレームの上に板を乗せるのではなく、たわんで丸まってしまっている面を平らにするのがポイント。
(図4参照)この上にクッションを置いてはじめて、普通の家具椅子の状態になるのだそうです。
金属ネットは、座面の中央に置くのではなく、「左右の中央で前後の奥」に敷くのが大事とのこと。
理学療法士さんの専門誌への連載で、この内容のイラストを描かせて戴きこの方法を知りました。それから現在102歳の祖母も座面に板を敷き10年目、あまり広まっていない気がするので掲載してみました。
あっそうそう!板を御使用の場合は、多少体重でたわむ位の合板で充分ですが、その上には薄すぎるクッションだと余計坐骨を圧迫しちゃいます。厚みのある上質のクッションが必須になります。
ご家族の方は、「車椅子を折り畳む時、この敷いたネットが邪魔になって施設側の手間になるんじゃ、、、。」と心配なさるかもしれませんが、乗せているクッションを外すのと同時に外せば済みますよ~。(^^)/
次回は、拘縮予防のクッションに関して掲載予定です。
※ (坐骨結節 ざこつけっせつ)とは?
座ると座面に刺さる感じのする、骨盤の骨の部分です。(図1.2で赤くなっている箇所)通常の椅子に座ってみて戴けますか? 次に座面とお尻の間に上向きに手を差し込んで見てください。肛門の両脇に、掌に骨が集中して体重がかかる部分があると思うのです。これが坐骨結節という部分だそうです。ここに体重が集中してしまうのです~。イタタタタ。
(記事アドバイス:理学療法士 大渕哲也さん)
祖母は板を使っての補正で、最近クッションの厚みを薄くしたら、お尻に傷が出来てしまいました。ちょうど左坐骨結節の体重がかかる骨の箇所です。猛反省です。
年齢を重ねると傷の治りが遅く、日常生活に支障が出て来ます。板で補正した方は、くれぐれも厚みのあるクッションをお使い下さいね。(2013年10月15日)