介護イラストレーター群青亜鉛 の「自宅で介護お助けヒント集」 第19回(現在、全22回)
寝る姿勢を整える編(ポジショニングの入り口)3
なんで関節の動く範囲が狭まってしまったり、拘縮は進むんでしょう?動かせば解決するわけでもなさそうで、地球に住んでいる限り、避けられない事情があるみたいなのです。

腹式呼吸が出来なくなると筋肉の緊張が高くなります、横隔膜がしっかり下がって肺に空気が入る様に姿勢を整えましょう〜という内容が前回の記事でした。さて今回は更に、何でジ様バ様の筋肉ってこんなに緊張して、関節が固まっちゃうんでしょう?に焦点を当てます。
前回はこちら 寝る姿勢を整える編2
家族介護者のリラックスへの思いは果てしない
寝姿勢を整えることはポジショニングと言うそうです。 祖母は数え100歳の頃から、入居の特別養護老人ホームの理学療法士(PT)さんとは別に、知人のPT大渕哲也さんにも来て診て頂いています。体位ごとに基本のクッションを決め、それをベースに施設職員さんに対応してもらっています。
ですが、急速に脚の拘縮が進む祖母の体に私自身が対応しきれてないのが正直なところ。その間職員さんと、ああだろうかこうだろうかと検討したり、大渕さんに質問したり、専門家の方の著書を拝読したり、セミナーを受講したり取り組みますが、気が焦るばかりです。
「よい姿勢って何でしょうね?」余りにクヨクヨする私に、介護の勉強仲間の知人Kさん(ケアマネ)がこの問いかけをくれました。「ばあこさんにとって苦痛に顔を歪めず、褥瘡にならず、ご家族が見舞いに来てくれてあれこれ考えてくれるだけでも幸せじゃないですかね?ゆっくり応対していきましょうよ。」
重力下にいる限り、常にどこかの筋肉が緊張している
「無重力空間だったらもっと楽だろうになぁ。」祖母の身体介助時によくそう思います。人は重力に体が潰されないように、常にどこかの筋肉が緊張しているそうで、それが拘縮にも大きく影響を与えているらしいのです。
重力に抗って働く筋肉の総称を、抗重力筋と呼びます。(イラスト1段目,2段目)
寝ている時でも、休みがないの
立位時は、腹筋と背筋が抗重力筋として働いています。この抗重力筋は寝ていても活性化しており、仰向けでは背中側(脚を含め)。腹這いで寝るときは腹部側(脚を含め)の筋肉が緊張しています。
仰向きにずっと同じ姿勢で寝ているとすると、特定の抗重力筋(背筋等)が活性化(緊張)しっぱなしになり、そのまま筋肉が固まってしまい易いのだとか。(イラスト中段)
重力からくる筋肉の緊張をほぐしたい
マットレスと体の隙間にタオルやクッションで支えを作ると、重力の悪影響を減らすことが出来るのだそう。
基本は、
- 頸部体幹部など、全体の捻れ・傾きをなくす。
- 体とマットレスの間に隙間を作らない。
- マット・クッションは、柔らかすぎるものを使用しない。
- 出来るだけ腰が反らないようにないように。肩甲骨は外側へ、頸部は軽度屈曲位に。
ほんまにクッションやタオルを挟むと筋肉の緊張は変わるんでしょうか?
抗重力筋の影響を減らすには
イラストの下から2番目は、私が昨年受講した理学療法士 田中義行さんのポジショニングセミナーの受講直後の感想絵図です。 実習で試した抗重力筋の働きと、あてがったタオルによって筋肉が緩むことを体験しました。
枕、あばら骨と骨盤の間、太ももの間、膝からすねぼん〜足先にかけてタオルをあてています。再度、骨格くんによる解説図をご覧下さい。特に横向き姿勢(側臥位)では、肋骨と骨盤の間には何も骨がなく背骨が曲がってしまう為、クッションを挟むとといいのだそうです。(イラスト最下段)
横向き姿勢へのうまいポジショニングは効果があるらしい
“両肩と骨盤を結んだ線でねじれのない四角形を作るように寝る姿勢を整えること”は、先ほどの1.にあたり、前回ご紹介しました。側臥位でも、長方形の形をそのまま横向きの姿勢にあてはめるといいそうです。そして肩甲骨は外側へ、頸部は軽度屈曲位なのだそう。祖母にはこの対応が出来ているつもりですが、なかなか簡単ではありません。
この内容は、また近いうちに取り上げたいと思います。
(記事アドバイス:理学療法士 大渕哲也さん, 理学療法士 田中義行さん)